Sunday, June 01, 2008

The Second Move-1

先手が打てないヤンキース: その1

チェンバーレインの先発が決まった。本来なら6月2日のツインズ戦なのだが、29日のオフを利用してローテーションを変更。放送中にあったマイケル・ケイのコメントによれば、それには特別な理由があるとのこと。現段階では明かせないらしい。

チェンバレンついに初先発へ 3日のブルージェイズ戦
Joba's first start to come Tuesday

特に隠すことではないと思うが、明かせないのはそれによって不利益が生じるから。ぱっと思いつくのはホームアドバンテージ。ジラルディのことなので、右打者の多いブルージェイズ戦を選んだというのもあるかも知れない。

キャンプ中は先発投手としてトレーニングを積んでいたチェンバーレイン。ところが開幕直前にブルペン入りを命じられる。そして再び先発に転向。チーム事情を考慮してのものだとしても、後手に回っている印象は拭えない。まずはここまでの経緯を振り返ってみる。

3/19: 勝つための措置として、ブルペンでの起用に方針変更。将来的には認めたものの、この時点で明確な先発転向プランはなし。

4/30: 4番手のヒューズが、勝ち星のないまま(0-4、防御率9.00)DL入り。復帰は7月以降。代役は今季マイナー契約のラズナー。

5/04: 不振の(防御率8.37)ケネディが調整を理由にマイナー落ち。チェンバーレインの先発転向とは無関係としながらも、プランの存在は認める。

5/09: ケネディの代わりに上がってきた井川が先発。3回6失点で降板、代役失格の烙印を押される。

5/10: ラズナーが連勝。先発4番手のメドが立つ。

5/15: コールアップされたケネディが再び先発。5回5失点で3敗目。調整期間はわずかに2試合(8.1イニング)。井川はブルペンで投げることなくマイナー降格。

5/21: 前々からあったプランとして、チェンバーレインの先発転向を発表。ブルペンで起用しながら調整させることを明言。 この日はその第一段階。ラズナーは無傷の3連勝。

5/24: 45球をメドに2度目の調整登板。

5/27: ケネディが途中降板、広背筋を痛めてDL入り。ここまでの成績は9試合に投げて0勝3敗、防御率7.41。

5/28: 3度目の調整登板。リミットは55球。

5/30: チェンバーレインの先発日を発表。実質的にケネディの穴を埋めた形。

アクシデントに順応したように見えるかも知れないが、率直に言って見極めが甘い。ペティットとムシーナは実績があり、ヒューズは誰もが認める将来のエース。ケネディは去年の成績が素晴らしい。ファーンズワースのポジションさえ何とかすれば、今年も勝てる。サンタナの獲得を断念したことからしても、おおよそこんな風に考えていたのだと思う。

ペティットは良くも悪くも防御率4点台の投手。ムシーナは球速の衰えが目立ち、期待されたヒューズも終わってみれば平凡な成績(*1)。好成績を残したケネディは、たった19イニングしか投げていない。(*1)2007年 防御率4.46

今季の先発はワーストと書いた通り、こうなる可能性は十分にあった。事が起こってから対処するなら誰にでもできるわけで、それを事前に想定するのが本来の仕事。仮にヒューズとケネディが故障しなかったとすれば、状況はさらに悪化していたはず。つまりアクシデントどころか、不幸中の幸いと言っても言いすぎではない。

ヤンキース傘下にはおよそ200人の選手がいるが、その中でベンチ入りを許されるのはわずかに25人。その25人をいかに選び、適材適所に配置するか。極論するなら、この作業でシーズンの大勢が決まると言ってもいい。

著しく能力の低いダンカンや、峠を越したエンズバーグ。マイナー契約だったラズナーがいい例で、こんなことをやっているようでは勝てるわけがない。と、ここまで書いたところでこのニュース。

Patterson up, Ensberg DFA'd, and lineup - NJ.com

予想通りエンズバーグがDFAになった。見極めが甘いとはまさにこのこと。自ら穴を作っては右往左往するという、毎度お馴染みの自作自演。上がってきたパターソンも、通用するようには見えなかった。

チェンバーレインにも同じことが言える。より多くのイニングを投げる先発を軽視し、逃げ切ることには必死になる。能力よりも経験が上回ってしまうため、中継ぎ投手は一生中継ぎのまま。何かのきっかけでもない限り、その構図が崩れることはない。その最たるものがケネディであり、今回のチェンバーレインだと思う。

ジラルディの野球を見ていると、とにかくデータを気にし過ぎる。本来データとは感じたことや考えを実証するためにあるもので、データから何かを結論づけるのは順序が逆。相性よりポテンシャルを優先するのが当たり前だし、たとえ右投手でもシンカーボーラーなら左打者にとっては厄介なもの。

本質を見抜こうとせず、データが理屈になっているようでは占いと変わらない。こういう1次元的な思考も、見極めという点では明らかにマイナス。多少話は逸れるが、最後に付け加えておく。 次回は先発転向の是非とその理由について書く予定。

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Joba Role
Hot Stove 2008-5

2 comments:

Anonymous said...

こんなチームを応援してると考えると悲しくなりますね(笑) もう松井には自己成績のみを考えてプレーしてもいいんじゃないかなって思うくらいひどいチームになってしまいましたね。
あの三連覇したときはどんなことがチームに起こっていたのでしょう?ぜひ知りたいですね。
あと、勝ちパターン、いわば中継ぎエースがいないと最近はチャンピオンになれてないと考えてるので、その役目を探すのも必要ではないでしょうか?まあ、それ以前に先発が足りないのをなんとかしないといけませんが。

KMFIS said...

今年は開幕前に腹をくくったので平気ですが、
こんな状態が続くとさすがに厳しいです。

>どんなことがチームに起こっていたのでしょう?

以下の記事を読んでもらえば分かりますが、
一言で言うと前任者の遺産ですね。
投手力も高かったはずですよ。

End Of An Era-3

先発が好投すれば全て丸く収まります。
まずはそこからでしょう。




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