Thursday, November 29, 2007

End Of An Era-3

ヤンキースの12年(その3): 60にして天命を知らず

指揮官としての監督に求められるのは、合理性と勝負勘。特に前者は不確定要素の多い野球において、一定の勝率を叩き出すための最も重要なファクターになる。1年以上対戦がない投手との相性を重視、勝ちパターンに拘った一本調子の投手起用。

ほんの一例だが、トーリの野球はお世辞にも合理的とは言えない。ところがそんな監督の指揮するチームは12年連続でプレーオフ進出。この趣旨でどんなに熱弁したところで、納得してはもらえないだろう。


監督の重要性は何度も書いてきたが、プレーするのはあくまでも選手。極論すればポテンシャルをいかに発揮させるかが監督の役割であり、絶対値の大きさでその依存度も変わってくる。そこで着目したのが総年俸、まずはグラフを見て欲しい。

横軸は年度、縦軸(100は1位)はリーグ全体における総年俸と地区順位を表している。便宜上(*1)年俸順位は30チーム、地区順位は5チーム制に換算してある。(*1)92年までは26チーム、以降97年までは28チーム。93年までは7チーム制。

トーリが就任した96年以降、年俸トップを譲ったのは98年の1度だけ。その98年にしても700万ドル差の2位で、トップのオリオールズは破格とも言える数字だった。総年俸とチーム力は必ずしも比例しないが、それが上位となると話は別。

ましてや30チーム中トップなら、不良債権など処々の事情を考慮してもチーム力は群を抜いていると言っていい。つまりトーリが指揮したヤンキースは、常に圧倒的なチーム力を持っていたことになる。

92年までは見ての通りの低迷期。ただし年俸順位はそれほど低くない。前述の理屈から言えばそれ相当のチーム力はあったはずで、疑問に思う人もいるかと思う。信じるかどうかは別だが、これを説明する記述がWikipediaにある。以下はその抜粋。

「1980年代に入ると長い低迷期を迎えてしまい、最下位争いをするチームに成り下がる。フリーエージェント権を行使した大物選手に大金を投じるものの、1981年を最後にワールドシリーズ出場からも遠ざかった。1990年、オーナーのスタインブレナーがリーグより、オーナー停職の処分を受けたことから改善の兆しが現れ始めた。」

「上層部からの妨害なしに首尾一貫した監督采配ができるようになるというのも一因であったが、この頃に就任したGMのジーン・マイケル(後にボブ・ワトソン)とバック・ショウォルター監督のもと、ヤンキースのチーム編成方針を、才能を買うことから、ファームで才能ある若手を育てるように変更した。」

野球を知らないスタインブレナーの意向が強く反映されていたため、名前だけの選手ばかりで中身のないチームだったということだろう。この記述を裏付けるように、グラフも90年を境に一変している。

年俸と地区順位が完全に相関したのは93年。これはオーナーの独裁的支配から逃れ、人並みのチーム作りができるようになったことを意味する。つまりこの年から強いヤンキースは出来上がっていたわけで、96年に就任したトーリはそれを引き継いだに過ぎない。これについてもWikipediaに興味深い記述がある。

「トーリ監督とキャッシュマンGM体制は、基本的には、前任者のマイケル、ワトソン及びショウォルターらの築いてきた基礎によって勝利を獲得したものであり、中でも、デレク・ジーター、アンディ・ペティット、ホルヘ・ポサダ、マリアーノ・リベラやバーニー・ウイリアムスら、ヤンキース傘下のファームで育った生え抜き選手の成長に負うところが大きかった。」

いずれもヤンキースを支えた主力選手だが、生え抜きというところがポイント。企業の体力と同じで、根幹がしっかりしているチームは大崩れしない。接ぎ木とは持ちが違うし、その成長力には計り知れないメリットがある。

ヤンキースが最後にワールドシリーズを制したのは2000年。2004年以降はリーグチャンピオンにすらなっていない。ウォンカノーがメジャーに定着した時期(2005年)から考えても、トーリの功績というのは前任者のそれと言っても差し支えない。

トーリはヤンキースのオファーに対し、屈辱的というコメントを残している。己を知らないとはまさにこのこと、滑稽以外の何物でもない。関係ないが、24(シーズン5)の大統領を思い出してしまった。次回は年俸額そのものと、チーム作りの関係について書く予定。

参考サイト:
ニューヨーク・ヤンキース - Wikipedia
USATODAY.com: Salaries Databases
ヤンキースのレギュラーシーズン成績
MLB Score Team Index

End Of An Era-1

2 comments:

Anonymous said...

こんばんは!
そんなに長くメジャーリーグ観てないので
ヤンキースが低迷してた時代があるってイメージ沸きません。

そういえばボストン対ニューヨークがこんなふうに争ってるのって
ここ数年以内のことだとか言ってる人がいました。
これからレイズやトロントの時代が来てもおかしくはないですね。。。
サンタナ一人いてもなぁと争奪戦には疑問です。

KMFIS said...

こんにちは。

僕もこちらに来てからなので、
ヤンキースの低迷期は知りません。

レッドソックスとのライバル関係は、
98年から始まっているようです。
過熱し出したのは2000年辺りからでしょう。

東地区の他チームはともかく、
レイズは大きなきっかけが必要です。
悪循環から脱出しないことには始まりません。

サンタナほどの投手になると、
ある意味仕方ないかも知れません。
今年のベケットのように、
絶対的なエースがいるのは強みです。
プレーオフのこともありますから。

ただコストパフォーマンスという点では、
他にやり方はあると思います。
確実と言えば聞こえはいいですが、
安易な方法を選択してるとも言えますね。




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