Wednesday, November 15, 2006

Worth Or Worse

レッドソックスが松坂との独占交渉権を獲得した。
落札額はポスティング至上最高となる60億。

正式な発表以前からレッドソックスの落札は確定的だったこともあり、もっはらの関心はその落札額。この60億という数字、我々庶民にとっては想像すら難しいが同じ野球のカテゴリーで比較すると多少分かりやすい。(金額は一部を除き推定、総年俸は今季)

・イチローの落札金額は14億、石井は15.3億
・両リーグトップの巨人の総年俸は34.5億、最下位の楽天は14.9億
・メジャー30チーム中5チーム(KC、PIT、COL、TB、FLA)が総年俸60億以下
・西武在籍時の松坂の年俸総額は契約金を含めて8年間で13.7億
・メジャー最高年俸はAロッドの27億
・西武の年間赤字額は20億

単純比較でイチローの4倍以上、破格という形容以外思いつかないほどである。これほどまでに入札額が高騰した背景には主に以下の3つがあると考えられる。中でもWBCは最も大きな要因であり、2年前のプレーオフで活躍したベルトランのケースを思い出させる。

1. 26歳とまだ若く比較的健康で安定した実績がある
2. WBCでの活躍と日本の優勝
3. 落札チームの本命が資金力の豊富なヤンキースと見られていたこと

ポスティングとは本来独占交渉権を得るためのものだが、事実上は移籍金の扱いでこの落札額はそのまま西武に入る仕組み。おそらく想定外のWBC、松坂が来季FAを取得することなどを考えると西武にとっては追い風を受けての絶好の売り時となったわけだ。

念願だったメジャーへの夢を実現し強豪レッドソックスに入団目前の松坂、3年分の赤字を埋めるだけの資金調達に成功した西武。この両者にとっては何の問題もない結果だが当のレッドソックスにとってはどうなのだろう。

株や競馬の理屈と同じように利益の陰にはほぼ等倍の損失があるという見方をすれば、松坂に60億もの巨額を投じる価値があるのかという疑問が沸いてくるものである。人間誰しも同じことを考えるもので、当然のようにこの趣旨の記事があった。

松坂への60億円あればできる豪華投手陣
Red Sox's winning bid for Matsuzaka: $51.1 million

個人的にはほぼ同意見。もちろん現状の年俸を基準にしているためFAにでもなって実際に獲得しようとすればこの金額で収まるはずもない。ただ契約金や年俸とは別のものである独占交渉権に60億の価値があるかと問われれば答えはノーだ。

松坂加入による広告効果や収益などを考えれば十分元は取れるといった見方もあるようだが、それはあくまでビジネスとして見た場合にのみ言えること。野手投手に限らずメジャーの超一流選手の年俸は20億前後であるから、60億とは単純に考えても年俸負担だけで済むそれらの選手を単年契約なら3人獲得できる金額に相当する。

仮に松坂が防御率1点台の活躍をしたとしても、3点前後の投手を3人獲得する方が戦力は遥かに上。つまり戦力的に見た場合、決して安い買い物でないことだけは確かである。

松坂の年俸は12億前後になるだろうと言われている。仮に3年契約だとすればポスティングを含めた松坂に対するコストは1年当たり32億、5年契約では24億になる。したがって超一流の成績を残したとしても5年契約しなければ明らかにコストパフォーマンスは悪くなる。しかもこれは契約期間中に故障しないという前提での試算で、長期契約すればするほどそのリスクは高くなるから始末が悪い。

唯一のメリットは松坂がまだ若いこともあり、しばらくは先発の枠を1つ確保できること。ただしこれもある程度の成績を残すことと故障しないというのが前提になる。

順調なら来季のレッドソックスにベケット、シリング、バベルボン、松坂の4本柱が出来上がる。潜在能力だけならかなり強力な布陣と言えるが、今季のベケットとシリングは勝ち星に比べて防御率が悪くバベルボンと松坂は未知数と不安はある。

また松坂に総額100億前後の資金がかかるだけに、いくらレッドソックスと言えども今後そう派手な動きはできないはず。この先発4人がある程度の働きをすれば例年通りの強敵になるが、一歩間違えば下位に沈む可能性も十分あるだろう。今後のGMエブスタインの手腕がいろんな意味で楽しみだ。

今回のポスティング、次点はメッツとの報道でヤンキースはそのメッツとも金額に開きがあったようだ。つまりヤンキースは大方の予想に反して何が何でもという姿勢ではなかったという見方もできる。ただ単に読み間違っただけかも知れないが、結果だけから判断すればキャッシュマンにしては上出来だろう。

資金力トップのヤンキースが効率など考える必要はないが、仮に合理性を優先したとすれば一事が万事という意味において評価に値する。キャッシュマンのことなので来季までにその評価が勘違いだったことを思い知らされるとは思うが。

それにしてもこの松坂、時代が変わったとは言え10歳の頃からメジャーの夢を持っていたとは驚いた。しかもその夢を実現し借金だらけの親に60億の恩返し。松井ではないがまったくたいした男である。

関連記事:D-Rave, How To Spend Money

2 comments:

Anonymous said...

どうしても私のブログからこちらにトラックバックできないので今回はリンクはらせていただきます~

私としてはボストンのポスティングには失望しました。

お食事会

KMFIS said...

コメントありがとうございます。

本当のレッドソックスファンの意見ですね。
あれだけ世間が踊っているというのに関心します。

以前メディアの論調の部分で意見が合いましたが、
こういうコメントは僕にとって救いです。

盲目的なファン=正義はうんざりなので。




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