Saturday, December 16, 2006

D-Rave

メジャーリーガー松坂誕生! 「球場の美しさに感動」
Red Sox introduce Matsuzaka(WMP)

いつものようにコーヒーを飲みながらウェブサイトをチェックすると反応が悪い。それもそのはず、日本は今このニュースで持ちきりなわけでそれが関連サイトならなおさらのこと。日本に住んでいなくてもこんな形でその関心の高さが分かってしまうのだから面白い。

ただこれほどまでにアクセスが集中するのは、純粋な野球ファンや松坂ファンだけでは到底実現しない。つまりメディアという教祖に洗脳された日本人のレベルが露呈した格好で、今に始まったことではないが決して喜べないことでもある。

これだけで日本の状況を想像するのは容易いが、レッドソックスファンのaoiさんの記事(かなり面白い)によるとまさに猫も杓子もの状態でデタラメのオンパレードらしい。

松坂くん、レッドソックスの18番になる。

半分冗談にしても、大和魂という形容を公の電波を使って放送するのはどうかと思う。同じ理屈で言えば、アメリカ人が日本に来て英語で通そうとするのはヤンキー魂なのだから認めなければならない。実際多くの日本人がそうしているが、西洋人を外人さんなどと呼ぶのがいい例でそれはただの迎合に過ぎない。

aoiさんも書いているが、そもそも大和魂という意味が理解できない。何かのイベントでもない限り誇りや愛国心を擬似的にしか持てず、逆にベタな愛国心を否定する日本人に大和魂もクソもないのである。象徴としての天皇制がその背景にあるとしても、都合のいい時だけ日の丸を持ち出すのでは日本の将来も高が知れている。

能書きはこれぐらいにして本題に。本題と言っても興味があったのは松坂ではなくその契約内容。当初の松坂側の要求は3年契約の年俸1500万ドル、一方のレッドソックスは6年契約の年俸700万ドルと言われている。両者には大きな開きがあったが、最終的に6年5200万ドル(年俸にして867万ドル)で決着した。

数字だけで判断すればレッドソックスの圧勝、メディアや関連サイトの記事を総合してもほぼ同意見。吸血鬼とも称される代理人ボラスが悪玉扱いされているのも少なからず影響しているだろう。ただ個人的にはそうは思わない。仮にこれが勝負であれば引き分け、ボクシングの採点のようにどちらか決めろと言うなら勝者はボラスと答える。

ポスティングに5000万ドル以上もの大金を投じたレッドソックスとしては3年契約など呑めるはずもなく、松坂側が譲歩しなければ契約自体反故にしていた可能性が高い。なぜなら応札額はジャパンマネーを当て込んでのものであり、それがたった3年で回収できる試算が成り立つとは考えにくいからである。

つまり長期契約しなければ戦力とコスト面の両方においてレッドソックスにメリットはなく、絶対に譲れない条件になっていたわけだ。ただし応札額の5000万ドルがこの状況を生み出しているのも事実。自分で自分の首を絞めているのと同じで、次点と大きな開きがあったことから考えても自業自得な側面は否定できない。

対するボラスは上記の理由は百も承知、したがって当初のもくろみなどとっくに消え去っていたのは間違いない。それでも要求を変えなかったのは単純に少しでも好条件を引き出すためのブラフ、間違っても要求を呑むとは考えていなかったはずだ。

仮に要求通りになったとすると、3×1500万ドルの4500万ドルが報酬の対象額となる。ボラスが松坂とどんな契約を交わしているか分からないが、おそらく3年後の代理人の椅子は保障されていないだろう。

ましてやメジャーで投げたことがない松坂の3年後などどうなっているか分からない。故障して棒に振っている可能性すらある。それならば1000万ドルの上乗せに成功した目の前の5200万ドルを取った方がどう考えても得策。次期代理人の保証がない限り、来年のポスティングでも2年後のFAでも同じことが言える。

ただボラスにとってもレッドソックスの応札額は想定外で、これほどの高額にならなければさらに多くの血を吸える可能性はあった。

結局のところ両者にとってポスティングがネックとなりドロー、あえて勝者を探せば西武ということになる。その西武も一銭にもならない恐怖を味わったわけでその心中は敗者同然、真の勝者はメディアとタダで踊ったみなさんと言えそうだ。

追記:少し書き忘れたので補足。

今回の契約で松坂はルーキーの日本人選手としては過去最高の評価を得た。日本で最高の打者と評される松井の700万ドルと比較しても当初の1500万ドルという年俸は明らかに法外な要求。

野手と投手の違いやWBCなどを考慮したところで落としどころはせいぜい1000万ドル。この観点で考えても今回の結果は落ち着くべきところに落ち着いたと言える。

ボラスはそのダーティーなイメージからか何かと槍玉にあげられることが多く、果ては年俸高騰の戦犯にまでなっている。ボラスの名誉のために書いておくが、彼は職務をまっとうしているに過ぎず戦犯でも何でもない。

年俸高騰は資本主義社会においての副産物、それを防ぐためにはルールで縛る他ない。ただそうなると優勝持ち回りのようなシステムに成りかねず、肝心の企業努力も疎かになり見ていて面白くない。

日本人選手がメジャー移籍する際、同時に残留を約束されているケースがある。こういうぬるま湯のような体質が高騰の一因であり、日米問わず一にも二にも払うから上がるという図式が根本にある。代理人制度に問題がないとは言わないが、少なくとも高騰の要因にするのは大きな間違いである。

関連記事:Worth Or Worse , How To Spend Money, Seeing Nothing Is Believing

2 comments:

Anonymous said...

こんにちわ。うちのブログへのコメント、ありがとうございました。

今回のボラスの評価ですが、Kmfisさんの記事と同感です。ここを読む前にKmfisさんのコメントに返信をしたんですが、ここに書いてることと、ほぼ同じような事を書いてしまいました。ここを読んでから書けばよかったです(笑)。

KMFIS said...

コメントありがとうございます。

あの記事が事実だとすればその可能性はありますね。
さすがプロというか何というか。
経験に裏打ちされた駆け引きとは言え、
僕ら一般庶民からすると参りましたという感じです。

僕が思うことは少数派の場合が多いので、
共感してもらって素直に嬉しいです。

こちらこそよろしくお願いします。




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