Wednesday, July 08, 2009

Chickens First

鶏としての自覚

Twitter / aoi: 松本さんのお笑い評。日本のTV事情を把握しにくい外国 ...

ラリー遠田という評論家がいる。昨日偶然知った(上記リンク)のだが、この人の書く記事が素晴らしい。切り口の面白さと分析力に加え、文章にも無駄がない。日頃からスポーツ記事にうんざりしていたこともあって、すぐに興味を持った。以下はその一例。その辺のライターにはまず書けないと思う。

ロンブー淳の「不気味なる奔放」テレビ朝日『ロンドンハーツ』が嫌われる理由

「普通の人間は、世の中で生きているうちに、遠慮したり妥協したり挫折したりといった経験を経て、最低限の社会性を身につけていき、それを無意識のうちに他人にも期待するようになる。彼らは、本音をさらけ出してのびのびと楽しそうに生きている人間を見ると、理解不能なものを見せつけられた感じがして、底知れぬ不安を覚えるのだ」

日本人の持つ国民性と保守思想。人間の根源的な習性を下敷きに、これから向かうべき道を訴えているわけだ。現時点ではお笑いが専門らしいが、チャンスにさえ恵まれれば日本を代表する評論家になることだろう。

インターネットの普及で記者やライターの肩書きを持つ人は増えたが、現状は中身が薄まっただけで活性化とはほど遠い。内容はあってないようなものだし、都合のいいつじつま合わせばかり。これは以前も取り上げた記事だが、意地悪を承知で逆の趣旨(後半部分)で書いてみる。

名門ヤンキース復活なるか? 豊浦彰太郎のMLBブログ

「振り返ってみると’07年のオフの段階でもヤンキースにはフィル・ヒューズやイアン・ケネディ、ジャバ・チェンバレンらの若手との交換を条件にヨハン・サンタナやCC・サバシアを獲得するチャンスがありましたが、キャッシュマンはそれに応じませんでした」

「その結果1年後には(若手の放出という出血を伴わず)CC・サバシアを獲得することに成功したのです。ここに、FAによる即戦力の獲得と若手の育成の両立という揺るぎない戦略を垣間見ることができます」

「その結果が13年ぶりのレギュラーシーズン敗退。前述のヒューズとケネディを先発に立てて、実に8敗(0勝、防御率7.45)を記録しています。これまで資金力に任せた補強を行ってきたヤンキースですが、2000年を最後にワールドチャンピオンにはなっていません。戦略的には頭打ちといっていいでしょう」

趣旨に沿う点と点だけを繋げて、もっともらしい結論で締めくくる。勉強不足なのかやっつけ仕事なのかは分からないが、こういう記事は本当に意味がない。この人の場合はまだいい方で、内容がない上に稚拙を通り越してコントに成り下がっている人までいる。しかも公平性は皆無。彼の常套句を借りれば、ある意味凄いということか。

「そんな民衆なら送る価値はない」

他国に資金(物資)援助をしても役人が着服してしまう問題で、西部邁がこんなコメントをしたことがある。案の定暴論と非難されたが、果たしてそうだろうか。国民の反感を買った企業が(一時的にでも)態度を改めるように、受け手側がしっかりしなければ始まらない。考え方においては常に鶏が先なのだ。

関連記事:Threesome

おわライター疾走

2 comments:

aoi said...

ラリーさんにも好みや思い入れはあるようですが批評する場面では客観性を極めてますね。
文章はこのような自分自身に厳しく矛盾がないタイプのものと、kmfisさんが紹介してらしたブログや田口さんのブログのような、のどかな人柄を感じさせるものが好きです~。両極端ですが。

日本人の国民性は救い難いんですが、それはさておきそちらの考え方でそりゃ違うだろうっていうタイプを思い出しました。
2~3年前ですが、現地の方のMLBブログを読んでましたら、以下和訳ですが

「私にとって試合の映像は必要ない。私が重要視するのは常にデータだ。」

と書いてあったのです。
手段と目的が逆さまです。
この手の輩を大量発生させたセイバーメトリクスは罪深いなと。
それ以来数字先行主義に出くわすと以前にも増してシラけるようになったのでした。

ビル・ジェイムズ氏のオタクっぷりは嫌いじゃないんですけどもね。

KMFIS said...

>客観性を極めて

評論家にとって最も大事なことなのに、
これができる人は少ないです。

>両極端ですが

人を選ぶ基準(好きなタイプ)がこれです。
自分勝手に考えない人か憎めない人。
どちらかでないと友達にはなれませんね。

>手段と目的が逆さまです

まさにその通りだと思います。
本来洞察力があれば済むことですから。
データの扱い方や把握の仕方も問題で、
数学オンチなのも頷けます。

>この手の輩を大量発生させた

最近日本でも増殖してきたようです。
この選手は左に強いと分析するより、
その理由を探求する方が遥かに有意義。
数字の持つ説得力は怖いです。




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