Thursday, August 14, 2008

That's The Spirit

漫画家 赤塚不二夫さん死去:社会:スポーツ報知

全てを無力化させる存在

左脳を寄せつけない右脳のように、赤塚不二夫にはこんなイメージがある。迎合することなく自らの道を貫き、そして突き抜けてしまった人。ないものねだりなのは承知の上だが、こんな生き方にはどうしても憧れてしまう。

これでいいのだ。 赤塚不二夫対談集 / 赤塚不二夫/著 タモリ/[ほか対談]

そんな赤塚不二夫を体現できるのがこの本。作品だけで十分という人もいると思うが、生の声という点では分かりやすい。そういうわけで、今回はその一部を紹介する。まずは有名なタモリとのエピソード。

赤塚 「本気っていえば、あの正月の軽井沢の別荘で雪が降ってたとき.....」

タモリ 「あれは敵わなかったなあ。ケツにロウソクは入んなかったからな(笑)。だってオロナミンCくらいの太さのロウソクなんだもん(笑)。よく入ったねえ、俺入んなかったよって言ったら、バカだねーお前は。石鹸をつけんだよって、どっちがバカなんだよ(笑)。石鹸つけりゃあ、あんなもんスルーッて入るんだよ。そんな人にゃあ敵わないよ、俺も。廃業」

赤塚 「じゃあ、これ覚えてるかなあ。朝4時頃、雪降っててさ。あなたが車乗りたいって言って、俺が助手席に乗ったんだよ。そしたら俺に死んでもイイ?て聞いてきて、俺イイよって答えてさ。雪ん中メチャクチャ走ったんだよなあ。軽井沢の朝.....」

タモリ 「明け方だったんだよなー。誰もいないしあんな雪見たことなかったし、雪の森ん中メチャクチャ走って車もメチャクチャ」

赤塚 「だからね、どんなくだらないことでも、死ぬ気で本気になって行動するってのが面白いって思ったよなあ。普通適当に遊ぶだろ、そういう時は。たとえば、雪の上でケツにロウソク差すとかさ(笑)」

タモリ 「俺は目白のマンションに一人で居候させてもらってたんだけども、この人は他にもマンションを持ってる大金持ちだと思ってたんだよね。だけど他のマンションなんてなくて、帰るところがないから事務所のロッカーを倒してベッド代わりにして寝てたんだよ」

タモリ 「そして(一緒に飲んで帰る時は)この人はタクシーで俺は(赤塚の)ベンツ(笑)。目白と下落合なんて近いんだけど、一度たりともベンツで送って行ったことはないね」

赤塚 「この男をなぜこういう風にしていたかというと、才能なんだよ。俺はこいつの才能を見込んでたんだよ。だから何が何でも東京に置いておかないといけない。九州に帰しちゃダメだと思ったんだよね。そのためには何でもする」

面白いものに対する果てしない探究心と、自己犠牲とは似ているようで対極に位置する価値観。人間誰しも二面性を持っているものだが、彼には当てはまらない。正真正銘の天才バカボン。これ以上カッコいい人もそうはいない。次は柳美里とのやりとり。まさに右脳が左脳を圧倒した形と言える。

柳 「私、うるさいイメージあります?」  
赤塚 「あるよ」  
柳 「うるさいって感じますか?」  
赤塚 「何か、理屈っぽいよ」  
柳 「いや、だって今日は理屈を考えに考えて.....」

赤塚 「そうじゃあないよ。普通に行こうぜって意味。素敵な人なんだから、あんまりグズグズ言わない方がいいよ(笑)」
柳 「グズグズ言うのが対談じゃないですか(笑)」
赤塚 「そうじゃないんだよ、普通に話そうって言ってるの。そうしたらね、すっごい可愛い人になれる」

柳 「可愛いなんて言われたことないですもん」
赤塚 「お前はしつこい、うるさいって言われちゃダメなんだよ。人間ってね、可愛い、あなたは素晴らしいって言われてそれでいいんだよ」

古い価値観の押し付けに聞こえるかも知れないが、メッセージは別のところにある。理屈や思想を持つのはいいことでも、それが全てになってはダメ。せっかく女性に生まれてきたのだから、いい部分を見失わないように。それは何よりも大事なこと。こうやって理屈を書いていること自体本人に笑われそうだが、そんな意図があるのだと思う。

YouTube - 赤塚不二夫とトンデモない仲間達 ~別れ

ビデオにある高見恭子のコメントも印象的。自分の信じた道を進めば、子供のままでも社会人になれる。それを身をもって示したということなのだろう。ちなみにタモリとの対談は、以下のような形で終わっている。生前はナンセンスを提示し続けてきた赤塚不二夫だが、最後は嬉しかったに違いない。

赤塚 「これでイイんですよ。これでいいのだ!彼と俺とはね、ただある時に出会ったってことだけで、それを自分で大事にしておけばいいだけなんだよ。俺が面倒みたとか、みられたとかっていうことは一切関係ないんですよ。だからそっちはそっちで勝手に生きてりゃいいし、こっちは勝手に死にゃあいいわけだよ。だけど、死んだ時は来てくれよな」

タモリ 「あんたのとこの葬式もメチャクチャだろうからなあ。.....楽しませてもらうよ」

Playlist Updated:
Tony BennettのYoung And Foolish. これを書いている時にたまたま聴いていたのだが、タモリと赤塚不二夫の出会いはジャズミュージシャンの山下洋輔がきっかけ。詩の内容も含めてハマっている気がする。演奏は美しいピアノで知られるBill Evans.

Play Sub Tracks

赤塚不二夫 - Wikipedia
赤塚不二夫公認サイト これでいいのだ!!

関連ニュース:
赤塚さんとタモリ、ロウソクショーやフンドシ姿で共演

2 comments:

Anonymous said...

こんにちは!
KMFISさんが名文を書いておられる時はレスが少ない気がするのは気のせいでしょうか。
(失礼な言い方してたらごめんなさい)
ブログは概してそんなものでしょうか…。

若い頃の二人の写真見ましたけどいい顔してますね。
私も彼らのエピソードには熱くなりました。
弔辞にもぐっときましたよ。

ところでKMFISさんはお笑いではどなたがお好きなんですか?
爆笑問題でしたっけ。

KMFIS said...

こんにちは。

読まれるか読まれないかの基準も含めて、
一般的にはそうかも知れませんね。

僕のブログは正直分かりません。
ただレスがしにくいことだけは確かなようです。

>若い頃の二人

誰にでもあんな時代があるとはいえ、
その中でも理想的なケースという気がします。

>お笑い

若い頃のタケシ、とんねるず(貴明)
ダチョウ倶楽部、ハマった時のさんま
爆笑問題、タモリ

ぱっと思いつくのはこんな感じです。
日本のテレビは何年も見ていないので、
古い人たちばかりですが。




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