Galaxy 2 Galaxy, Hi-Tech Jazz
偶然と必然の融合
全てがデジタル化しようとしている今、アナログっぽいものに惹かれることがある。例えばちょっと昔のアメリカ映画に出てくる、壁掛け型の電話。キッチンで無造作に話す仕草が、どういうわけかサマになる。実際使ったら不便かも知れないが、そのたたずまいは捨てがたい。
Hi-Tech Jazz EP (1993)
時代に逆行するという意味ではトイカメラも同じ。その名の通りオモチャなのだが、精度が低い分だけ面白い写真が撮れる。ありのままを正確に切り取るのが本来の姿だとしても、フィルターを通した世界もまた魅力的。デジカメに比べると扱いにくいが、それでも愛好家は多い。
音楽の世界でも同様のことがあった。1983年にヤマハからDX7が発売されると、時代は一気に加速。アナログレコードがCDに取って代わったように、デジタルシンセ全盛の時代が訪れる。
そんな中、既存のアナログシンセを多用した音楽が脚光を浴び始める。シカゴハウスの独自解釈とも言えるそのサウンドはデトロイトテクノと呼ばれ、ダンスミュージック界だけでなく多方面に大きな影響をもたらした。
黒人音楽の流れをくむ音楽性もさることながら、下落する一方のアナログシンセを蘇らせたことが何よりも大きい。それからというもの、アナログ(ヴィンテージ)シンセの価格はうなぎ登り。名器と言われるMoog(モーグ)欲しさに、何百人も並ぶといった現象まで引き起こした。
1つのブームには違いないが、アナログシンセには独特のよさがある。代表的なのは音の太さで、特にベースの音は当時のデジタルシンセには決して真似できない。今でこそソフトウェアシンセで再現できるが、利便性より本来の音を再認識させたという意味では革命と言ってもいい。
荒廃した工業地帯のデトロイト。退屈と貧困にあえぎながら暮らす黒人。時代と共にクズ同然になっていくアナログシンセ。そんなネガティヴなイメージが融合して生まれた音楽、デトロイトテクノ。美しくもはかなく、時に力強い。部屋を暗くして、フルボリュームで聴くのがベスト。
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ハービー・ハンコックのRock It。当時最先端だったフェアライトをフィーチャーし、方向性はまさに対極。エレクトロ(ヒップホップ)というより、単純にブッ飛んだ曲。
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