Heaven Or Las Vegas-5
ラスベガスの楽しみ方。
忘れていたわけではないが、タイミングを逃したこともあって半年も放置してしまった。このまま終わらせないのも気持ち悪いので、今さらながら続きを書いてみる。
翌日は昼過ぎに起床、ジャックポットを出したせいか目覚めもいい。例えるなら、買ったばかりの服を着て出かける朝の心境に近い。前日はロクに食べていなかったので、早速ホテル内のバフェでブランチを取ることにした。懐が温かい上に、ポイントが使えるので持ち出しはゼロ。この上なく優雅なひと時だったが、そんな気分も長くは続かなかった。
食事を終えるとカジノに直行、何の躊躇もなくスロットを回し始めた。それなりに戦略は立てていたのだが、これがまったく話にならない。前日の勝ち分はほんの数時間でなくなり、見る見るうちに差し込まれていく。気づけばいつもの夢遊病者に成り下がっていた。
そうこうしているうちに夕食の時間が近づく。この日は別のホテルにあるBouchonというレストランにいく予定になっていて、事前に予約もしてあった。実際食事どころではなかったが、キャンセルするわけにもいかず仕方なくその場を後にした。
タクシーに乗ろうと正面玄関に出ると、そこには本来のラスベガスが広がっていた。ドレスアップした人たちと何台ものリムジン。きらびやかなネオンに照らされたその様は、ニューヨークとは一味違った雰囲気がある。
それなりに有名なレストランらしいが、今となっては何を食べたか覚えていない。もっともすでに夢遊病者と化していただけに、直後であっても同じだったと思う。
せっかく外に出たので、散歩がてら他のホテルにも行ってみることにした。と言っても目的はもちろんカジノ。特にアトランティックシティーでは何度もジャックポットを出しているバリーズには、どうしても行きたかった。
着いてみるとシーザース同様空いていた。数時間遊んでみたものの、やはり結果は思わしくない。その後パリスにも寄ってみたが、今度は遊ばれただけ。重い足を引きずりながら、泊まっているシーザースに戻る。
相変わらずカジノは盛り上がっていなかったが、バーは満員でクラブには行列が出来ていた。皆一様に笑みを浮かべ、誰一人としてつまらなそうには見えない。それどころか、ラスベガスの夜を満喫しているといった雰囲気。
そんな光景を見ているうちに、ようやくあることに気づいた。そう、ラスベガスとは賭博をするところではないのだ。カジノはおまけみたいなもので、ラスベガスの魅力は街全体を楽しむことにある。
昼は観光やショッピング、車で遠出するのもいい。夜は生バンドでも見ながら酒を飲み、踊りたくなればクラブがある。それでも物足りなければ、カジノで遊べばいい。ラスベガスとはそんなところだ。スロットがシブイのも、盛り上がってないのもこれで合点がいく。
時すでに遅しとはまさにこのこと。散財した今となっては、とてもではないがそんな楽しみ方はできない。できるのはサルのようにスロットを回すことだけ。
それから何時間が経っただろう。半ばヤケクソだった自分のところに、インカムをつけた係員が近づいてきた。機械が故障したわけでもなく、もちろん呼んでもいない。
「KMFISさんですよね?」
「そうですが.....」
「こちらには初めてですか?」
「はい.....」
「ようこそシーザースへ」
こんな会話の後、20ドルのクーポンを手渡された。スロットには会員カードが差さっているので、名前が分かっても不思議ではない。ただ初めて来た人全員を対象にしているとも思えず、ラッキーな気分にはなった。
説明によれば、このクーポンは系列ホテルならどこでも使えるらしい。幸い翌日はホテル内の有名レストランで食事する予定。焼け石に水というかゼロが2つ足りないのだが、文句を言ったらバチが当たる。いい加減見切りをつけて、その日は部屋に戻った。(続く)
Heaven Or Las Vegas-1
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